分卷阅读1(6/10)

    「おう、待ってろ」

    牢内からの无言の要望に、こちらも短く颔いた魔族が、片手に何かを?えて格子扉を?り抜ける。

    あの扉を?れたら――。

    自らの血と、砂利で?れた頬を、じっとりと濡れた床へと押し付けながら、ディルトが悔しげに奥歯を噛み缔めると、その头上では、魔族の男がニヤニヤと嗤いながらディルトの握りしめられた両手に武骨な木制の手枷を取り付ける。

    「しっかり拘束しとかねえと、この勇者サマは元気ヨすぎて逃げちまうかもしれねえからなァ!」

    「く…ッ!」

    冷笑する魔族の男に、木枷でひとまとめにされた両手を身体の後ろに回されて、ディルトは轧む両腕の痛みと共に悔しさと无力感に唇を噛んだ。

    「さあて、こっちはこれで准备完了だ。おい、そっちはどうだ?」

    顽丈な木枷がディルトの双腕の自由を完全に夺った事を确认しながら男が言うと、もう一方の魔族も薄い笑みと共に颔いて、狭い牢狱の床の上へと手にしていた何かを设置する。

    「おう、こっちもオッケーだ。これでこの勇者サマも……ククククッ!」

    喉の奥からいやらしい嗤いを漏れさせる魔族を前に、ディルトはなす术もなく眼前の鉄格子を睨む事しかできなかった。

    「よォし、そんじゃあ後はこの手枷を锁に繋いで……へへへ、どうするよ?勇者サマよォ。これでとうとう自由に动き回る事もできなくなっちまうぜェ?」

    「く…ッ」

    「くくく、ホントは完全に拘束した状态でもう何発か殴ってこのお绮丽なツラを真っ赤に染めてやりてえけど、それはまあ、人间の言う『武士の情け』ってヤツで许してやるよ。それに、せっかくの勇者サマの顔があんまり丑く肿れ上がってちゃあ、见世物観てる方も兴醒めかもしれねえしなァ!」

    耳元で告げられた『见世物』の言叶に、ディルトが『何を…!』と言叶を尖らせるよりもずっと早く、傍らの魔族は、天井から垂れる钢鉄の锁を掴み缔めると、その分厚い金属片の先端を、ディルトの両腕を束缚する木枷に固定する。

    「よォし、これで完了だ。へへ、勇者サマ、益々无様で……イイザマだぜェ?」

    「ッ……」

    がちり、と短く钝い音と共に、隣り合わせで拘束された両腕が天井からぶら下げられるように固定され、遂に言叶通り完全なる囚われの身となったディルトの前で魔族たちは愉快そうに鼻を鸣らして嗤い合った。

    「そんじゃ、まあ、ゆっくり楽しめよ、勇者サマ。俺たちに远虑なんかしなくていいからなァ」

    暗い闭锁空间の中に、魔族の声が响き渡って、ディルトの背中を嫌な予感が駆け降りる。

    『楽しめよ』

    『俺たちに远虑なんかしなくていいからな』

    告げられた不穏な言叶に、贵様ら、何を考えている…!とディルトは眉を吊り上げたが、魔族たちはそんなディルトの様子を冷笑しながら嘲るだけで、それ以上の言叶は返さなかった。

    「じゃ、せいぜい楽しめよ。勇者サマ。俺たちはしばらくしたら、また様子见に来てやるからよォ」

    「!!」

    短い沈黙が落ちた後、口を开いたのは軽薄そうな笑みを浮かべた魔族だった。

    「ま、待て……!」

    声と同时に踵を返し、湿った岩肌を踏みしめる音を鸣らしながら牢の格子を?る魔族たちに、痛む胸を押さえたディルトが、呼吸も整えぬまま言叶だけで追いすがっても、彼らの足は止まらない。

    「それじゃあな」

    「へへへ、あばよ。勇者サマ」

    先刻同様、がちり、と低く钝い音が反响すると、天井から吊るされるような体势で眉间に皱を寄せるディルトの前では、唯一の希望への繋がりだった外界への道が絶たれていく。

    「ま、待て……!贵様ら……ッ!!何を……!!おい…ッ!!待て…!!贵様らァッ!!」

    まるで牢の向こう侧に漂う薄暗い闇に溶けるように消えていった二体の魔族の背中に向けて、ディルトは必至になって声を上げたが、唇を曲げて叫ぶ彼に跳ね返るのは、虚しい自身の声だけだった。

    07

    「く…そ……ッ」

    思わず口をついて出た悪态に、ディルトが自嘲する暇もなかった。

    ごとり。

    「!!」

    再び静寂に包まれた牢狱内に不意に响いた物音に、ディルトは弾かれたように顔を上げると、音のした方向へと势い任せに己の首をねじ向けた。

    ごとり。

    「……!」

    再び闻こえた不穏な音色に、ディルトが目を凝らし鉄格子近くの床の上を覗き込むと、そこには木造りの樽のような物が置かれている。

    あれは……。

    先刻、牢の中へと足を踏み入れたあの忌々しい魔族の片割れが置き去りにしていったものだと、ディルトが记忆をたぐるうち、樽の中からはまたしても不気味な物音が鸣り渡った。

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